不織布用水性接着剤の開発事例:変性天然ゴムラテ...

不織布用水性接着剤の開発事例:変性天然ゴムラテックスによる環境対応と実用性の両立 ― H-BCBシリーズのご紹介 ―

refresh 26/02/13

1. 開発背景(市場要求と社会的要請)

1. 開発背景(市場要求と社会的要請)

不織布は、マスクや衛生用品といった生活資材から、産業用フィルター、包装材に至るまで、非常に幅広い分野で使用されています。
これら不織布製品の製造においては、合成ゴムや合成樹脂を主剤とした接着剤が主流であり、接着性能や加工安定性の面で高い完成度を有する材料として長年使用されてきました。
一方で近年は、SDGsへの取り組みやESG投資への関心の高まりを背景に、最終製品を構成する材料についても「原料がどこに由来するのか」という点に注目が集まっています。特に、不織布製品はマスクに代表されるように大量消費・使い捨て用途となるケースが多く、使用材料を石油由来からバイオマス由来へと転換することは、温室効果ガス排出抑制など環境負荷低減の観点から重要な課題となりつつあります。

こうした市場環境の変化を受け、弊社では長年培ってきた天然ゴムラテックスに関する技術を応用し、バイオマス由来原料を用いながらも、従来の水性接着剤と同様に既存の製造ラインで使用できる不織布用水性接着剤の開発に着手しました。環境性能(バイオマス比率)の向上と、実生産における加工適性の両立を図ることで、環境配慮型材料への切り替えを検討されているお客様にとって、導入しやすい選択肢となることを目指しています。

2. 技術的課題:天然ゴム特有の物性と向き合う

天然由来原料、特に天然ゴムラテックスを工業製品の主剤として採用する際には、「品質の安定性」と「加工適性」が重要な検討課題となります。不織布の製造工程では、高速塗工時における挙動の安定性に加え、接着剤が繊維内部へどの程度浸透し、表面にどの程度保持されるかといったバランスが求められます。
一方、天然ゴムは合成ポリマーと比較すると、分子量分布や微量成分のばらつきが生じやすい材料です。そのため、これらの特性が製造条件や仕上がりに影響を与えやすく、工業用途において安定した品質と加工性を確保することが、技術的なハードルとなっていました。

そこで本開発では、あらゆる用途に対応する汎用性を追求するのではなく、「柔軟性と密着性が特に求められる用途」にターゲットを絞りました。天然ゴムが本来有する特長を最大限に活かしつつ、安定性に関わる課題については化学的な処方設計によって補完することで、実用性の高い材料設計を行っています。

3. 技術的アプローチ:変性技術による機能付与

本製品の主剤には、独自技術により処理を施した変性天然ゴムラテックスを採用しています。天然ゴムは本来、優れた柔軟性と造膜性を有する材料ですが、そのままでは不織布繊維、特に合成繊維に対して十分な密着力を発揮できない場合があります。
そこで本開発では、ポリマー鎖に特定の官能基を導入する変性処理を行い、繊維表面との親和性を高めました。これにより、天然ゴムの特長を維持しつつ、不織布用途に求められる密着性能の向上を図っています。

4. 評価結果および性能の客観的分析

各種評価の結果、不織布同士の貼り合わせにおける濡れ性および接着強度については、従来の水性接着剤と比較しても、実用上遜色のない性能を確認しました。天然由来原料を主とした設計でありながら、基本性能の水準を確保できている点が、本開発の一つの成果といえます。

  • 風合い(ハンドリング)
    天然ゴム特有の低いガラス転移点(Tg)により、接着後も不織布が硬くなりにくく、素材本来の柔らかさや質感を維持しやすい結果が得られました。風合いが重視される用途において、有効な特性と考えています。
  • 耐久性
    耐熱性や耐溶剤性といった点では、高度な産業資材用途においては合成系接着剤に優位性が残るものの、簡易包装材や一般的な生活資材用途といった想定範囲内では、実用上十分な耐久性能を有していることを確認しています。

本開発で重視したのは、「最高性能の更新」ではなく、バイオマス原料を主体としながら、実用に耐えうる性能バランスをどのように構築するかという現実的な最適解の提示です。この評価軸において、本材料は十分に有効な選択肢となり得る結果を示せたと考えています。

開発されたH-BCBシリーズのカタログデータファイルはこちら
天然ゴムラテックス系、水性接着剤 H-BCBシリーズ データシート >>

5. 採用実績と信頼性の裏付け

5. 採用実績と信頼性の裏付け

本開発による H-BCBシリーズ は、不織布貼り合わせ用途において、約3年前より現在に至るまで、量産ラインで継続的に採用されています。
試験的な使用にとどまらず、実際の生産現場で長期間使用されている点は、本製品の信頼性を裏付ける重要な要素です。
また、天然由来原料に対して懸念されやすい「ロット間のばらつき」や「経時的な性状変化」についても、実運用を通じて管理可能な範囲で扱うことができています。

 

6. 今後の展望と技術相談について

現在は、産業資材や簡易包装用途を主な対象としていますが、今後は変性技術のさらなる最適化を進めるとともに、他のバイオマス由来材料との複合化による用途範囲の拡大も検討しています。環境配慮と実用性能の両立を目指し、継続的な技術開発に取り組んでいく方針です。
また、「環境対応を進めたい一方で、天然由来原料の採用には技術的な不安がある」といった課題をお持ちの開発・企画担当者様に対し、弊社では評価結果に基づくデータの提供に加え、用途に応じた物性調整(カスタマイズ)のご提案を行っています。既存の合成系接着剤からの切り替え検討や、ラボスケールでの塗工テストなど、具体的な検討段階からご相談いただける技術パートナーとして、対話を重視した対応を継続してまいります。

株式会社レヂテックスは神奈川県の液体天然ゴム専門メーカーとして、水性接着剤、水溶性接着剤の開発、製造を行っています。天然由来原料を主成分とした天然ゴムラテックスは環境に配慮した製造を行える自然素材として評価されています。また、当社は製造工程では揮発性有機化化合物や環境負荷物質を削減するなど、環境保全にも努めています。
新製品情報、研究・開発体制、開発事例などをブログで紹介していますのでぜひチェックしていただきたいと思います。製品や新たな製品開発について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問合せください。