解重合(低分子化)NRラテックスの基礎とその応用について

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解重合(低分子化)NRラテックスの基礎とその応用

 

はじめに

NR、および合成ゴム(S.R)の分子特性を表現するものの1つに分子量という言葉が用いられていることは周知である。そこで、まずこれについて一般的な知識を復習しておこう。平均分子量、分子量分布、分岐度などを一般にマクロ構造という。つまり、一本一本のゴム分子鎖の特性を標的としたミクロ構造に対してポリマー鎖全体としての性質をあらわし、特にゴムの強度や加工性に深く関係する性質である。

ゴムの分子量の値は平均的なものであって、実際にはこの値より大きい分子や小さい分子とがあり、全体としては分子量の異なったポリマーが統計的に分布している。NRの分子量は液状ゴムは1万程度だが、固形ゴムでは約5万から約200万であり非常に幅の広いもので、また測定方法によっても多少異なる。合成ゴムもおおよそ以上の範囲でありゴムラテックスは大きい分子量に属している。

最もよく用いられている平均分子量の表示法は、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および粘度平均分子量(Mr)で通常、MwはMrと近似している。分子量分布(MWD)は昔は測定に1週間もかかっていたが、今ではGPC(ゲル・パーミネーション・クロマトグラフィ)の進歩により1時間以内で測定が可能になった。また、MwとMnの比(Mw/Mn)でも分子量分布の見当がつけられる。すべての分子鎖が同一の単分散ポリマーは、Mw/Mnが1となり、MWDが広くなるにつれてこの値は当然大きくなる。

なお、ゴム工業で広く使われているムーニー粘度は、ゴムの個体での回転抵抗を測っているが、マクロ構造に密接に関係しているから極めてすぐれたMWDの検知法といえる。同様な意味で薄いフィルム(乾燥または加硫ゴム)のわずかな伸長裡における”緩和応力値”の測定も、MWDを知る上で簡易かつ適切な方法である。さて、ポリマーの分岐度というものも重要ではあるが、実際的には平均分子量や分子量分布ほどの影響力はない。

一般に言う「高次構造」とは、ゴム分子鎖間の結合状態、ゴムとフィラー間の結合状態、架橋構造などをいう。例えばゲルの種類や網目構造、カーボンゲル、ゴムの表面の性質であり、加硫ゴム製品の性質に大きく影響する。ゴムLtxの場合もLtxの粒径や表面の高次構造が大きく影響する。現在のところ、ゴムの高次構造の分子特性については、ゴム分子構造の複雑さによって十分理解されていない部分を多く残している。しかし、このことは実用上に非常に重要な特性であることから、今後トライボロジー、ナノテクノロジーなどの先端技術の進歩により高次構造が逐次解明され、新しいゴム製品の開発に結びついていくことが期待される。

Ltx、Emを用いる粘、接着加工は、溶剤溶解型に比較して多くの利点があるので実用開発の成果が著しい。しかし一方においては本質的ともいえる欠点があるから、完全な軌道に乗せるには今後多少の時間を必要とするであろう。Ltx系を用いる場合の問題点は2つある。すなわち耐水、耐湿性が低いことと、分子量が高く(NRでは約1×10?)、ゲル分が多い(NRでは30~50%)ことである。しかし現在ではそれらの欠点を逐次改良するための開発が行われ実用に移されている。

多くのLtx、EmをつうじてNRの際立った特徴は表面粘着性(tack)が低い反面、自着性(autohesion )が高いことである。その理由はNRが容易に界面で互いに拡散し、その結果融合し易いこと、およびNRLtx中の非ゴム成分が乾燥時にフィルム表面に移行してタックを妨げるが、圧着することによってそれを破壊し排除されるからであろう。NRLtxをベースにした粘着剤のタックあるいは初期接着性を与えるには、高融点域の粘着性付与樹脂を併用する方法が普通であるが、それらの樹脂に高度の凝縮力を持ち合わせているか、または架橋の可能性がないと強粘着剤(粘接着剤ともいう)とはならない。

その目的に用いられるのが、高分子型粘着化剤であって、一部のオリゴマー型合成Emや、低分子型(低下塑性)合成Ltxがベースに併用される。NR系の高分子粘着性付与剤として代表的なものはHRHLtxと、DPL(Depolymenised Rubber Latex)である。前者はマレーシア(RRIM)の研究グループにより開発されたLtxで、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、またはパラフェニレンジアミンなどをNRLtxに添加することにより、可塑度の低下自然増加防止とを図ったものであり、後者のDPLは主として沖倉らによって開発された解重合NRLtxである(1964)。表1にそれら低分子化型NRLtxのおおよその性質を示した。

表1
低分子化ラテックス 項目
造膜性 色様 解重合度(DPD)
(M25・gf/m㎡・15)
Wallace可塑度
(10kgWt、15″)
HRH Ltex*1 淡黄色 8 50
DPL*2 Type SH 濃黄色 0.35 15
Type H 濃黄色 0.45 20
Type M 黄色 0.78 27
Type L 淡黄色 0.95 35

*1:RRIM Malaya製(1980年入手)
*2:中央ラテックス技研試作(1981年)
*3:原料NRL LtexのDPDは10~14gf/m㎡、Wallace可塑度は80~90、ムーニー粘度(Moony Viscosity)はWallaceの1.2~1.3倍
 

固形ゴムに比較してLtxゴムの長所の1つは初期強度(green strength)が高いということである。それからすると低分子化(低ゲル、低いポリマー粘度)は逆な考えであるが、Ltx、Emのこれからの用途、接着、粘着、結合、注型などの加工分野においては、かえってそれが必要なことになるかもしれない。低分子化によって、Ltxゴムが柔らかく可塑性があり、しかも粘着性を向上することが容易になれば、いわゆる”素練りしたLtx”、”高分子型粘着化剤”として実用と直結する。

このような低分子化Ltxに、加硫復帰性(加硫すると加硫ゴム本来の高い物性を取り戻す性質)が付与されれば、さらに利用面は拡大されよう。例えば、接着剤としては初期タックが高く、張り合わせ後の経日または加熱後は接着性に転移し、残留粘着性は消失するという特徴が得られる。また、注型製品加工においては型表面模様の再現性が向上し、収縮性が減少する。

低分子化Ltxの実用化は環境対策(大気環境、屋内環境、安全衛生など)から、VOC(揮発性有機化合物)の低減に向けた脱溶剤化(水性化、ホットメルト、UV硬化技術など)の流れの中で、従来のソルベントタイプの粘・接着剤の代替として期待されている。次に低分子化NRラテックスの具体的物性や応用例について述べる。

 

1.DPL塗工皮膜の粘着物性

低分子化NRLtxの乾燥皮膜は素練り固形ゴムに比較してより強い粘着力を発現する。そのため、これまでのNRLtx、SBRの粘着配合と比較しDPLを配合した粘着剤は耐水性が優れている。粘着付与樹脂(ロジン、テルペン他の樹脂、C5、C9石油系樹脂)との配合物はソルベントタイプNR粘着剤と同様に良好な相溶性や粘着物性を示す。DPLは一般にゲル分を含んでいるので皮膜のグリーンが高く出るため、さらに低分子化して使用されることが多く、必要に応じてNRLtxやSBRLtxあるいはアクリルエマルジョンとブレンドすることにより、必要とする粘着物性の設計を行うことができる(表2参照)。溶剤系NRとDPLの粘着物性について比較した結果が表3で、粘着付与樹脂の単純配合においてほぼ同様な粘着物性を示す。

表1 粘着剤用途に変性されたDPL塗工皮膜の物性
DPL DPL-30 DPL-50
粘度(mPa・s) 50 50
pH 10 10
固形分(%) 54 54
粘着物性 粘着力(g/25mm) 800 1300
ボールタックNo. 9 11
保持力(23℃) 2hr< 2hr<
耐水性(hr) 24< 24<
DPL Type H級 SH級

DPL:(株)レヂテックス社製
試験法:上質紙55g/㎡にDRY25μ塗工、JIS Z 0237に準ずる、23±2℃
耐水性:約30Φのガラスパイプにテープ(25mm幅)を貼り、
一時間後に20℃の水に24時間浸漬し、剥がれるまでの時間
 

表3 粘着付与樹脂配合粘着物性
粘着剤組成 DPL-30 溶剤NR
樹脂の配合部数(対NR100部) 60 80 100 60 80 100



ボールタックNo. 18 8 4 10 5 3>
粘着力(g/25mm) 485 760 1165 440 705 1170
保持力
25×25mm、1kg荷重
40℃ズレ、3hr 0 0.5 0.8 0.5 1 2.3
80℃落下 hr 2.2 1.2 0.8 1.2 0.7 0.4
SART(落下)
対SUS、40℃、2℃/min
109 95 109 122 108 98

樹脂:ヤスハラケミカル(株)社製YSレジンD130(ジペンテン、SP=130℃)ベースのエマルジョン
NR:ML=48.5、トルエン使用15%に調整
試験法:テープ:PETフィルム、20~30μm塗布、JIS Z 0237に準ずる、23±2℃
 

表4

表4は強粘着配合としてテルペンフェノール樹脂Emとの配合例を示す。

粘着剤試料 1 2 3 4 5 6 比較例

DPL-30 100 100 100 100 100 100 NR:100
樹脂(軟化点130℃)* 0 10 30 50 75 100 30
老化防止剤 1 1 1 1 1 1 1



粘着力 800 1190 1430 1690 2430 2500 1160
ボールタックNo. 8 10 13 18 14 4 8
保持力 0.2 0 0 0 0.2 1.0 0

*ヤスハラケミカル(株)社製YSポリスター2130を47%濃度に分散、無溶剤タイプ
糊厚:25μm、JIS Z 0237に準ずる、23±2℃
 

また、より低分子化したDPLは粘着付与剤としてNRLtx、MGLtx、SBR、アクリルエマルジョンに添加配合して良好な粘着物性を与える。

表5はNRLtxにDPLを10~30部配合した場合で粘着物性が向上し、またDPLを増量することにより耐水性が向上することがわかる。可剥離性粘着剤、保護粘着シートなど微妙な粘着性のコントロールや結束テープなどの接着力の調整を、配合設計により行うことができる。

表5
試料 1 2 3 比較例:NR配合

NR Latex 90 80 70 100
DPL-50 10 20 30
ロジンエステル* 80 80 80 80
老化防止剤 1 1 1 1
増粘剤 0.1 0.1 0.1 0.1



粘着力(g/25mm) 480 630 780 390
ボールタックNo. 12 16 21 10
保持力(ずれ) 0 0.4 1.7 0
耐水性 5min 30min 24hr< 5min

*荒川化学工業(株)社製スーパーエステルE-720
テープ:上質紙55g/㎡、DRY25μm、JIS Z 0237に準ずる
 

 

2.DPLの加硫特性

DPLは加硫配合により良好な物性を示す(表6)。

表6
NR Latex
加硫配合
NR:DPL-30
7:3加硫配合
DPL-30
加硫配合
DPL-30
未加硫
M100(kgf/c㎡) 9 6 4 0.8
M300(kgf/c㎡) 15 12 10 0.9
M500(kgf/c㎡) 50 25 20 1.0
TB (kgf/c㎡) 325 310 245 2.0
EB (%) 1100 1100 1100 1200

加硫配合:S:0.9phr、Zno:0.9phr、PX:0.6hr、フィルム厚さ0.4~0.5mm、
加硫条件90℃×1時間
 

 

3.MMAクラフト共重合DPLの性質

NRから作られたDPL(H級)に対し、MMAモノマーにRedox触媒を用いてグラフト共重合したLtxがある。これを、沖倉らはDPMG、またはMG-DPLといっている。DPLへMMAをグラフト共重合したラテックスは耐熱性、粘・接着性に優れているため、永久粘着ラベルや粘接着剤として有用である。MMAグラフトによりタックが少なくなる反面、ヒートサイクル(0℃~100℃)や、気温の変化による粘着力の変化が少なく安定している(表7,8)。

表7 DPMGの粘着剤配合物性
ベース樹脂 対象 樹脂(YSポリスターU-115)
配合 樹脂/DPMG-40 0/100 60/100 80/100 100/100
相溶性 透明 透明 透明 透明
ボールタックNo. 3以下 3以下 3以下 3以下
粘着力
(g/25㎜)
対SUS 0℃ 10 1670 1250 S * 875 S *
23℃ 10 1080 1390 1500 S
60℃ 120 1140 1430 1655
耐水性 0 960 1170 1000
対PP 23℃ 20 920 1340 240 S
対PE 23℃ 5 450 470 60 S
保持力
(hr)
対SUS 60℃ 0(㎜/3hr) 0(㎜/3hr) 0(㎜/3hr) 0.1
対PE 40℃ 0.8 1(㎜/3hr) 2(㎜/3hr) 1.4
SAFT(℃) 対SUS 100 111 96 * 53

樹脂:ヤスハラケミカル(株)社製テルペンフェノール、DPMG-40:(株)レヂテックス社製
S:ステックスリップ *:凝集破壊
テープ:PETフィルム、糊厚30μm、乾燥105℃×5min、ボールタック J.DOW法(23℃)
粘着力180℃剥離度、耐水性:23℃水中に1日浸漬させ、1日乾燥させた後、対SUS180℃剥離強度測定、SAFT:1kg荷重 25×25mm(対SUS、40℃から2℃/min昇温の落下温度)
 

表8 DPMGの粘着剤配合物性(2)
試料 粘着力 ボールタック 保持力
DPMG 樹脂*2 対SUS 対PET 対OPP
DPMG-25
100部
25 1110 1280 870 8 0
50 1650 1320 1350 10 0
75 1530 1510 1510 6 0.2
100 1970 1900 1640 4> 12
DPMG-40
100部
25 990 1230 1050 9 0
50 1710 1640 1740 9 0
75 1790*1 1670*1 1160*1 6 0.2
100 1770*1 1940*1 1740*1 4> 1.0
レヂテックス DPMG-25 DPMG-40
主成分 解重合NRアクリルグラフトラテックス
固形分 50 50
pH 10 10
粘度(cps)
(mPa・s)
50 50
参考文献
  • 1) 沖倉元治:ゴム工業便覧(第4版)、P161~171、(1994)、日本ゴム協会刊。
  • 2) 沖倉元治:ラテックス・エマルジョンの最新応用技術、(1991)、沖倉編著、中日社刊。
  • 3) 沖倉元治:接着便覧(第17版)、P27~72、(1991)、高分子刊行会刊。

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